こんにちは。
今回はお客様からよくいただくご質問「ホームカラーと美容室でのカラーの違い」について、美容師目線で詳しく解説していきたいと思います。
最近では、ドラッグストアなどで簡単に手に入るホームカラー剤も増え、自宅で染める方も多くなっています。手軽で便利な反面、ホームカラーには思わぬリスクが潜んでいるのも事実です。
「一度自分で染めてから髪の調子が悪い気がする」
「何度染めても毛先だけ色が抜ける」
そんな経験はありませんか?
今回は【薬剤の違い】【技術の違い】【髪へのダメージ】という3つの観点から、ホームカラーとサロンカラーの本質的な違いをお伝えします。
1. 薬剤の違い 〜ブリーチ力と染料の濃さ〜
まず、ホームカラーとサロンカラーでは使われている薬剤の設計思想が異なります。
◆ ホームカラーは「誰でも簡単に染まる」設計
ホームカラーは、素人でもある程度ムラなく染まるよう、薬剤のブリーチ力(脱色力)を強く設定している場合が多いです。
なぜなら、髪全体にまんべんなく塗布できない前提で作られているからです。
そのため、
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髪のベースの色素をしっかり抜く(=強いブリーチ成分)
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希望の色味を濃く入れる(=発色を安定させるため)
このように、ややオーバースペック気味な設計になっています。
◆ サロンカラーは「必要な分だけ脱色」して「繊細に発色」
一方、サロンカラーではお客様の髪の状態や履歴、なりたいイメージに合わせて、必要最小限のブリーチ力でカラーを行います。
また、染料の調合も一人ひとりオーダーメイド。
ムラになりにくく、髪に負担をかけすぎず、長く色を楽しめるのが特徴です。
2. 色の持ちと退色のスピード
ホームカラー剤の多くは、強い脱色成分によって明るく発色させるため、染料の定着も浅くなりがちです。
その結果、数回のシャンプーで色が抜けやすく、「染めたてはキレイだけどすぐに退色する」という声が多いのです。
現在の毛髪科学の知見では…
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髪の内部(コルテックス)が傷つくと「空洞化」し、色素が流出しやすくなる
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強いブリーチやアルカリ薬剤は空洞化を加速する
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毛髪内部の水分量とpHの変化が退色に大きく関係する(近年の研究より)
これらの理由から、薬剤の強さに頼るホームカラーは色もちが悪くなる傾向があるのです。
3. 技術の違い 〜特に「リタッチ」が難しい〜
ホームカラーの一番の難しさは、「塗布技術」にあります。特に根元のリタッチ(伸びてきた黒髪部分だけを染める)を自宅で完璧に行うのは至難の業です。
自分でリタッチする難しさ
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塗る位置が分かりづらい
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手が届きにくく、見えない部分にムラができる
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根元以上まで塗ってしまい、毛先だけ明るくなってしまう
この結果、「ムラ染まり」「明るさの違い」「部分的なダメージの蓄積」が起こりやすくなります。
サロンではどう違う?
美容師は、髪の状態を見極めながら、0.5ミリ単位で根元の黒髪だけを染めることができます。
明るさや色味を周囲の髪に合わせることで、自然でムラのない仕上がりを作ることができ、しかも髪の負担も最小限です。
4. 繰り返しのホームカラーがもたらすダメージ
カラーの失敗は「1回だけなら大丈夫」と思っていても、蓄積ダメージとなって後から現れます。
例えば…
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繰り返すうちに色ムラが目立つ
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同じ場所を何度も染めて、切れ毛や枝毛が増える
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表面がパサつき、まとまりにくくなる
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最悪の場合、髪が途中で切れて伸びなくなる
特に髪を伸ばしている方や、ミディアム〜ロングヘアの方は、毛先にかけてダメージが蓄積しやすく注意が必要です。
5. ホームカラーは絶対NGなのか?
決して「ホームカラーは全部ダメ!」と言いたいわけではありません。
時間やコストの関係で、どうしても必要な時もあると思います。
ただし、もし自宅で染める場合は…
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「全体染め」ではなく、リタッチに留める
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2〜3ヶ月に1回程度に抑える
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髪質に合ったアフターケア(弱酸性シャンプー・集中トリートメント)を行う
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可能であれば、サロンでベースを整えてもらってからセルフケアする
というふうに、髪に負担をかけない工夫が大切です。
まとめ 〜プロの技術が守る髪の未来〜
ホームカラーは「その場では満足」できても、数ヶ月後に後悔するリスクを秘めています。
特に長くキレイな髪を保ちたい方には、サロンでのプロの技術による施術が何よりの近道です。
私たち美容師は、薬剤の選定だけでなく、髪の状態を見極め、必要最小限の負担で最大限の美しさを引き出すお手伝いをしています。
「最近カラーの色持ちが悪い気がする」
「自分で染めてムラになってしまった…」
そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの髪にとってベストなカラー方法をご提案させていただきます。