パーマと“イオン組成”の関係:トリートメントでカールを長持ちさせる科学と実践

1. なぜ“イオン組成”がパーマのもちに効くのか

パーマはケラチンのジスルフィド結合を還元→再酸化して形状を固定する処理です。この“骨組み”に加えて、塩結合(イオン結合)や水素結合といった“補助ボルト”が、日々のスタイリングや湿気での戻りやすさを左右します。塩結合はpHに敏感で、強アルカリ/強酸いずれでも壊れやすく、弾力低下につながります。サイエンスダイレクトPubMedMDPI

さらに、アルカリ処理(カラーやパーマ)で18-MEAという疎水性脂質が失われると、髪表面が親水化→膨潤しやすくなり、摩擦増大・カールのダレを招きます。PMC+1MDPI


2. pHとキューティクルの基礎知識(超要点)

  • 髪はアルカリで膨潤し、キューティクルが開きやすくなる → 摩擦やダメージに弱くなる。施術後は弱酸性に戻すのが基本。PMC

  • 18-MEAの喪失はアルカリ処理で進みやすく、親水化・摩擦増大の主要因。MDPIPMC


3. パーマ後の“イオン組成”最適化:トリートメント設計の勘所

3-1. 施術直後(当日〜48h)

  1. 等電点(弱酸性)へ戻す
     クエン酸/乳酸などのアシッドリンスでpHを4.5–5.5に調整。キューティクルの重なりが整い、塩結合も安定しやすくなります。PMC

  2. カチオン系コンディショニング剤で電荷補正
     アルカリ処理で18-MEAが脱離して表面がアニオン化した髪に、**4級アンモニウム塩(カチオン界面活性剤)**が静電吸着→表面疎水化→摩擦低減。αゲル基剤と組み合わせると塗布性と感触が安定します。Cosmetic Science |

  3. 油剤・シリコーンで“疑似Fレイヤー”形成
     18-MEA喪失で増えた摩擦を疎水皮膜で補い、カールの表面滑走性を確保。MDPI

ここまでが「pHを戻して(塩結合を安定)、表面を疎水化(摩擦を下げる)」というイオン組成リカバリーの柱です。

3-2. ホームケア(48h以降)

  • 弱酸性シャンプー:高pH洗浄は膨潤→退色・パーマのダレを助長。カラー毛・パーマ毛用の弱酸性処方を選ぶ。PMC

  • カチオン/アミノ系トリートメントを継続:静電気を抑え、**塩結合の環境(電荷バランス)**を整えやすい。Cosmetic Science |

  • 熱と摩擦の管理:高温でタンパク変性・染料劣化が進み、弾力低下や色褪せの原因。ドライは中温、アイロンは低めで素早く。PMC

  • 疎水皮膜のメンテ:軽いシリコーン/植物油で**水の出入り(膨潤)**を抑え、形状記憶をサポート。18-MEA喪失による摩擦増大の対策にも。MDPI


4. 実践メニュー例(サロンワーク想定)

目的: パーマ直後のカール安定化&艶

  1. 還元→ロッド形成→酸化(メーカー規定)

  2. すすぎ後アシッドリンス:クエン酸/乳酸でpH4.5–5.5に調整(1〜2分)PMC

  3. カチオン系CMC補修+ライトオイル4級アンモニウム塩+高級アルコール(αゲル)+軽シリコーンで表面整列。Cosmetic Science |

  4. 中温ドライ冷風でカール固定。PMC

注意:酸の“効かせ過ぎ”は硬化感の原因。弱酸性レンジに留め、髪質やダメージで濃度・時間を微調整します(一般論)。


5. 研究トピック(最新・再確認)

  • パーマ機構の再検証:最新のケラチン研究でも、ジスルフィド結合のリシャッフルが形状変化の本質であることが再確認されています。サイエンスダイレクト

  • 18-MEAの重要性:18-MEA消失→親水化→摩擦増大というメカニズムと、その感触・扱いやすさへの影響が繰り返し示されています。MDPIPMC

  • 摩擦の起源:キューティクルは重なり構造のため摩擦が方向依存。表面疎水化で滑走性が改善します。Biorxiv


6. よくある疑問(プロ&お客様)

Q. 弱酸性=安全でダメージしない?
A. 一般的にはアルカリより膨潤が少ない分、摩擦と流出は抑えやすいですが、例外として酸の濃度や時間が過大だと硬化感やきしみを招くことがあります。適正pHと時間管理が前提です。PMC

Q. どの成分が“イオン組成”に効く?
A. カチオン系(4級アンモニウム塩)はアニオン化した表面に吸着→帯電制御・疎水化で摩擦を下げます。クエン酸などの酸はpH調整と金属イオンのキレートで等電点に戻しやすく、コンディションが整います。Cosmetic Science |


7. まとめ(サロン&ホームの行動指針)

  • 施術直後は「弱酸性に戻す → カチオンで電荷補正 → 疎水皮膜で摩擦管理」。

  • ホームケアは「弱酸性洗浄 × カチオントリートメント × 熱・摩擦コントロール」。

  • 狙いは、塩結合(イオン組成)と表面疎水性を整え、ジスルフィドで作った形状を**“日常ダメージに負けない状態”**で守ること。サイエンスダイレクトMDPI


ご予約はこちらからどうぞ


▶ ご予約ページへ

最新情報をチェックしよう!
>ご予約はこちら

ご予約はこちら

24時間予約可能なネット予約をご利用ください。